まちづくり活動

 

 建築物は、狭義には個人、企業、団体等所有権者の所有物件で原則的には所有者の権利により改変が可能です。一方で建築物は、まちの中に相当な年月存在し続け、まちの景観形成する一因となります。まちには人が住み生活を営み、景観がその営みに大きく影響を及ぼすものです。
 このようなことから、建築設計に従事するものとして、まちへの影響を配慮することは大切で、建築と地域のまちづくりは深いつながりがあると考えます。当事務所では、まちづくり活動にも積極的に参画しています。

 

業界団体を通じたまちづくり活動

 公益社団法人兵庫県建築士会のまちづくり委員会に所属し、県内の地域、および近隣他府県との共催でまちづくりに関するシンポジウムを行ったり、全国的なまちづくり関連の団体との連携による様々な企画に取り組んでいます。また、行政と一体となり、まちの景観形成に関する調査等にも協力しています。

◆和歌山県の湯浅町は、醤油発祥の地として古代より栄え、そのまち並みは、文化財保護法による伝統的建造物群保存地区に定められています。今回は、この湯浅町の美しいまち並みを散策し、これまで当地のまちづくりに携わってこられた学識者、行政、地元の方々、建築関係者とのディスカッションを通して意見交換会を行いました。(2016.03)

◆まちづくり委員会で活動されている方のサポートとして、日本酒で全国的に有名な灘五郷のひとつである魚崎郷のまちづくり活動のサポートです。地元住民の方々と共に、普段生活している地元のまちをウォークラリーラリーし、改めて感じたことなどを集計し、ワークショップを開き、まちづくりを活気あるものにしていく活動です。(2012.11)

◆路地を生かしたまちづくりとして「全国路地サミット」が、国内持ち回りで毎年開かれます。2009年には神戸市で開催され、実行委員会として兵庫県建築士会まちづくり委員会が受け持ちました。(2009.10)

 
 
専門家としてのまちづくり活動

 ヘリテージマネージャーのとして、住居地である三木市で、地元のヘリテージマネージャーのメンバーと活動した事例です。

◆三木市の市街地は、地下水が豊富ということもあり、公共の洗濯場が昭和の中頃には数カ所在りましたが、現存するのはそのうち2か所だけとなりました。現在では、洗濯機も各家庭に備わる時代ですが、それでも洗濯場の利用者は少数ながらおられるようです。これらの施設もまちの景観の一因となっています。この洗濯場の老朽化に伴い改築することになりました。
 この活動は、材料を三木市が負担し、地元のまちづくり協議会、地元建設組合等建築関係者、ヘリテージマネージャーが連携で行う官民一体で取り組んだボランティア活動でした。(2009~2010)
・2009:清水の洗濯場 
・2010:丸一の洗濯場


◆兵庫県三木市は全国的にも有名な「金物のまち」で、大工金物を中心に多種多彩な品物を製造しています。金物といえば鍛冶屋、鍛冶屋といえば鞴(ふいご)と火は、欠かせないものです。まちの随所に、鍛冶職と縁深い稲荷神社などの神社が10か所以上あり、旧暦の11月には、夜も明けきらない早朝から、これらの神社に参拝する伝統行事(鞴(ふいご)まつり)が行われています。丸一(まるいち)稲荷社も例外でなく鞴まつりで参拝する神社です。伝統文化継承の一役を担うこの神社も、障壁等の老朽化が進み、地元自治会と建築関係専門家が一体となって改修していくことで、改めて地域の伝統文化を再認識できる機会となったと思います。この事業は、文化庁の「地域の文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」の事業です。(2011)


まちづくり、景観形成等に関連する調査

 まちづくりにおいて、まちの景観を形成する建物の現状調査も、後の修景計画をする上でも大切なこと考えます。当事務所も団体、個人を問わずこれらの調査に参画しています。

◆神戸市は、市域の中央を東西に六甲山系が連なっています。この山々の南側は、ご存じの通り幕末の開港から貿易を中心に発展し、異人館、外国人居留地など、ハイカラな中心市街地、港、住宅街の都市部が発展してきました。一方、六甲山系の北側には、対照的に田園風景の中に茅葺き民家などが点在する農村地域が広がっています。神戸市から兵庫県建築士会に、これら違った特徴を持つ地域の、景観的観点から歴史的建造物の現状調査を委託され、調査員として建物調査した事業です。

 ・神戸市北区、西区の茅葺き民家の景観的歴史建造物調査
 ・市街地内の歴史的建築物の景観的歴史建造物調査