建築設計

 

 日本の伝統的な建築物は、それを取り囲む庭、そして庭は周辺の山河を借景として奥行きの深い一体の空間をつくり、その中を建物を構成する様々な材料が配置され建築空間を構成します。そして、その空間は、柱、壁、建具等で仕切られ、建具を開け放つと、部屋の向こうに庭、庭の向こうに部屋~坪庭~部屋~裏庭というように、空間が奥へ奥へと広がりを見せ、その空間の中に建物の柱、床、鴨居などが交差して、諸外国の建築には類を見ない、透けていくような建築空間を創り上げます。この美しい日本建築文化の特徴を生かした、建築設計の業務に取り組みたいと考えます。

 

歴史ある市街地の住宅

◆古い歴史のある市街地に建つ住宅です。

 鉄筋コンクリートの住宅ですが、コンクリート打放しの壁には奥深い表情があります。周辺には、比較的新しい住宅も多くなりましたが、点在する歴史の古い瓦葺き屋根の伝統的な木造の建築物には、屋根瓦、土壁の外壁など、年を経て風合いが出ます。今回の建物も経年と共に表情豊かな壁となるような建築を計画しました。
 プランは、コの字型に中庭を囲むよう各室を配置し、開いた一面を2階レベルのバルコニー繋いで外部との間合いが柔らかく奥行きが感じられる空間構成となるように計画しました。要所には周辺の景観を乱さないよう、瓦、木材などの伝統的な材料を使用しています。

 
 
新しい振興住宅地の住宅

◆新しく開発された分譲住宅地内の住宅計画です。

 一般的に新興住宅地は、程々な敷地の区画分譲で決して充分なゆとりの在る土地とはいえないケースが殆どです。窓を開ければ隣から様子がうかがえ、プライバシーを確保するには曇りガラスか、目隠し用の面格子を窓に設置する程度のことしか出来ません。結果、窓の開閉頻度も自然と少なくなり、窓の役目そのものも機能しなくなります。
 そこで本計画は、南側の一面だけ大きく窓をとり、他の三面は、必要最小限の開口部の設置としました。内部空間に連続性を持たせ、光と空気の流れを妨げないように心がけました。 竣工引渡時は、モノトーンの外壁の塊が目を引きましたが、現在は外構の植栽などが成長しほど良いボリューム感になっています。

都市計画に伴う移築

◆都市計画で、境内に隣接する道路の拡幅に伴う社殿の移築工事です。

 他社の技術協力として、拝殿~本殿までの実測~設計を担当しました。限られた予算の中での計画でしたので、社寺建築の特徴でもある、随所に使用されている彫刻物を、出来るだけ再利用できるように計画することが条件でした。そのために、現状材料の劣化状況等の把握と寸法の精密な実測が必要でした。既存の材料を正確に調査、採寸、設計することは普段より時間を費やす作業でした。また、移築に際し、複雑な社寺建築の仕口を既木材に合わせて施工した宮大工の技量は尊敬の念に堪えません。移築後の写真の材料の色をみればどの材料が古材かは一目瞭然です。